固定資産税のための鑑定評価書の見方


標準宅地に係る不動産鑑定評価書の見方:
様式1<基本的事項及び鑑定評価額等>

 様式1には、鑑定評価の前提となる基本的な事項と最終結論である鑑定評価額等が記載されます。

1. 基本的事項

(1)価格時点

 価格形成要因は、時の経過により変動するものですので、不動産の価格はその判定の基準となった日においてのみ妥当します。
 価格時点とは、不動産の価格の判定の基準日であり、固定資産税の標準宅地に係る不動産鑑定評価書においては、平成18基準年度評価替えにおける価格調査基準日である平成17年1月1日が価格時点ということになります。

(2)鑑定評価の依頼目的

 鑑定評価の依頼目的欄には、「固定資産税標準宅地の評価額算定の基礎資料」とするための不動産鑑定評価である旨が記載されます。
 依頼目的を明記するのは、不動産の種別・類型、価格の種類及び評価条件との関係を明らかにするためです。

(3)不動産の種別・類型

 固定資産税の標準宅地はすべて宅地なので、対象不動産の種別は宅地となります。
 標準宅地は地域の標準的な利用方法に従って利用されている土地が多いため、建物の敷地として利用されている場合がほとんどですが、ここでは建物があってもないものとして、また借地権や地上権等の使用収益を制約する権利が付着していたとしてもそれらが付着していないものとして、つまり「更地として」の評価を行います。
 このため、不動産の種別・類型欄には「更地として」と書くことになります。

(4)価格の種類

 鑑定評価の依頼目的が「固定資産税標準宅地の評価額算定の基礎資料」である場合には、価格の種類は「正常価格」を求めるべきであるとされていますので、価格の種類は「正常価格」となります。

(5)評価条件

 鑑定評価は評価条件の設定如何によって、鑑定評価額に差異が生じます。
 本来、評価条件は鑑定評価の依頼者が依頼目的に応じて付すものであります。したがって、不動産鑑定士等が、依頼者の意思を確認することなく安易に付すものではなく、鑑定評価の依頼目的に照らした妥当性、合法性及び実現性の有無並びに第三者の利益を害するおそれのないことを十分に考慮して評価条件を設定することが必要であり、依頼目的に応じて、依頼者からの要請に対処できない場合は、依頼者に評価条件の改定を求めなければならないものとされています。
 したがって条件設定は、鑑定評価の妥当する範囲及び鑑定評価を行った不動産鑑定士等の責任の範囲を示す意義をもつものであります。
 また、依頼目的と評価条件は一対のものではなく、ある鑑定評価の依頼目的のもとでは妥当する評価条件が、別の鑑定評価では妥当性を欠くこともあります。

a. 対象確定条件

 対象不動産の確定に当たって必要となる鑑定評価の条件を対象確定条件といいます。
 建物がある土地を建物がないものとして、また借地権や地上権等の使用収益を制約する権利が付着している土地についてそれらが付着していないものとして、つまり更地でないものを更地として評価するためには、条件を付す必要がありますので、その旨を条件として明記します。
 不動産が土地及び建物等の結合により構成されている場合において、その土地のみを建物等が存しない独立のもの(更地)として鑑定評価の対象とすることを独立鑑定評価といいます。
 特定の政策目的から制度上独立鑑定評価として価格を求めるべきとしているものに地価公示法に基づく標準地の公示価格、国土利用計画法施行令に基づく基準地の標準価格及び公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱に基づく損失補償の対価としての土地価格があります。
 固定資産税の標準宅地の鑑定評価も、独立鑑定評価により「更地としての価格」を求めることが要請されています。

b. 想定上の条件

 不動産の鑑定評価においては、現実の用途及び権利の態様並びに地域要因及び個別的要因を所与として不動産の価格を求めることだけでは、不動産評価に対する多様な社会的要請に対応することができないことから、地域要因又は個別的要因に関して想定上の条件を付加することがあります。
 しかしながら、この場合には付加する想定上の条件が実現性、合法性、関係当事者及び第三者の利益を害するおそれがないか等の観点から妥当なものでなければなりません。また、一般に、地域要因について想定上の条件を付加することが妥当と認められる場合は、計画及び諸規制の変更、改廃に権能を持つ公的機関の設定する事項に主として限られます。

「実現性」とは、依頼者との間で条件付加に係る鑑定評価依頼契約上の合意があり、当該条件を実現するための行為を行う者の事業遂行能力等を勘案した上で当該条件が実現する確実性が認められることをいいます。なお、地域要因についての想定上の条件を付加する場合には、その実現に係る権能を持つ公的機関の担当部局から当該条件が実現する確実性について直接確認すべきことに留意する必要があります。
「合法性」とは、公法上及び私法上の諸規制に反しないことをいいます。
「関係当事者及び第三者」とは、依頼者及び鑑定評価の結果について依頼者と密接な利害関係を有する者のほか、法律に義務づけられた不動産鑑定士による鑑定評価を踏まえ不動産の生み出す収益を原資として発行される証券の購入者、鑑定評価を踏まえ設定された抵当権をもとに発行される証券の購入者等をいいます。

(鑑定評価の条件の例)
次のa. が対象確定条件、b. が個別的要因について付加された想定上の条件。

  1. 当該標準宅地上に建物等が存する場合には建物等がなく、かつ使用収益を制約する権利の付着していないものとしての鑑定評価。
  2. 当該標準宅地が、都市計画街路・都市高速鉄道・都市計画公園・都市計画緑地の予定地を含む場合にはその計画がないものとしての鑑定評価。


(6)鑑定評価の依頼目的及び条件と価格の種類との関係

 価格の種類には、正常価格のほか、限定価格と特定価格がありますが、鑑定評価の依頼目的及び条件との関係において、価格の種類の選択が正しくなされていることの確認として、次のような記述が求められています。

「本件鑑定評価は、上記依頼目的及び条件により、現実の社会経済情勢下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格を求めるものであり、求めるべき価格は正常価格である。」


(7)利害関係と縁故関係の有無

 鑑定評価に関与した不動産鑑定士等の対象不動産に関する利害関係又は対象不動産に関し利害関係を有する者との縁故若しくは特別の利害関係の有無及びその内容については、不動産鑑定評価書の必要的記載事項とされています。
 利害関係があるために、公正な鑑定評価を害するおそれがあるときは、不動産鑑定士等は原則として鑑定評価を引き受けてはならないこととされています。
 ただし、利害関係ありとされる場合において、不動産鑑定士等が不動産の鑑定評価を行うことを禁止しているものではなく、利害関係の内容を明示させることにより不動産鑑定士等がいかなる場合においても厳正な態度で鑑定評価に臨むことを期待している趣旨と考えられています。

(8)鑑定評価を行った日

 鑑定評価を行った日とは、いわゆる評価時点のことですが、これは鑑定評価の手順を完了した日、すなわち鑑定評価報告書が完成し、これに鑑定評価額が表示された日です。これを記載する趣旨は、価格時点と評価時点との間隔の如何が資料収集の可能性、価格形成要因の分析の正確度等に影響を及ぼし、鑑定評価額とも関係してくる場合があるからです。

(9)評価対象不動産の確認

a. 実地調査日

 対象不動産の確認に当たっては、鑑定評価の基本的事項により確定された対象不動産についてその内容を明瞭にしなければなりません。対象不動産の確認は、対象不動産の物的確認及び権利の態様の確認に分けられ、実地調査、聴聞等を通じて的確に行う必要があります。
 これは実地調査した日を記載することにより、実地調査した日の確認内容に誤りがなかったことを示すものです。

b. 確認に用いた資料

 対象不動産の確認に当たっては、土地についてはその所在・地番・数量等を、建物についてはこれらのほか家屋番号・建物の構造・用途等をそれぞれ実地に確認することを通じて、確定された対象不動産の存否及びその内容を確認資料を用いて照合しなければなりません。

c. 照合の結果

 実地調査の結果と確認資料の内容等が一致したか否かを記載します。不一致の場合は不一致の内容を記載するとともに、どちらの資料を採用したかについても明記することになります。

2. 鑑定評価額等

(1)標準宅地番号

 標準宅地番号は原則として市町村から指示された番号を記載することになります。

(2)所在及び地番

 対象不動産を特定するものとして、土地についてはその所在及び地番が必ず記載されることになります。

(3)住居表示

 住居表示が実施されている地域については、住居表示も併記することになります。

(4)1平方メートル当たり標準価格

 これは固定資産税の標準宅地の鑑定評価書に固有の記載項目になります。他に例がないわけではありませんが、通常の鑑定評価書にはこの項目はありません。
 対象不動産が市街地宅地評価法の適用されている状況類似地域の標準宅地である場合には、この価格の7割を目途として主要な街路の路線価付設が行われることになります。

(5)鑑定評価額

 鑑定評価書の結論部分で、鑑定評価書で最も重要な部分の一つです。ただし、固定資産税に係る標準宅地の鑑定評価書の場合には1平方メートル当たり標準価格の方がよく利用されることになります。

図 鑑定評価書の基本的記載事項となる年月日の関係

図 鑑定評価書の基本的記載事項となる年月日の関係

様式1には4つの日付の欄があります。
 価格時点、鑑定評価を行った日、実地調査日、それから発行年月日の4つです。これに依頼受付日を加えるとわかりやすいので、依頼受付日を加えて時系列に並べてみると図のようになります。
 そして、最も重要な日付である価格時点は通常実地調査日から鑑定評価を行った日の間に入ってくることになります。

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